ども!
本日は陸上自衛隊で最も過酷と言われているレンジャー訓練についてご紹介したいと思います。
僕自身もこの訓練に参加し、無事卒業しました。
この訓練を卒業できたことは、これから死ぬまでの人生で、唯一人に誇れることであると自負しています 笑
それほど辛く、過酷な訓練でした。
あまり知られていないこの訓練ですが、今回興味を持ってこの記事を見ていただいた方に何一つ包み隠さず、実際体験した訓練がどんなものなのか、ということを説明できたらと思います!
よろしくお願いします!
レンジャーとは?

レンジャーの沿革

レンジャーはもともと米軍の訓練であり、1955年に2名の自衛官が米軍のレンジャー訓練に参加し、学んだことを持ち帰り自衛隊レンジャー訓練がはじまりました。
レンジャー徽章

レンジャー訓練卒業者には徽章が授けられるのですが、その徽章の中央ダイヤモンドは何があっても負けない強固な強い意志の意味があり、周りを囲う月桂樹には勝利の象徴という意味があります。
みんながこの徽章に憧れ、この地獄の訓練に参加します。
レンジャーの任務
レンジャー部隊は有事の際、本隊とは離れて任務を遂行します。

どういうことかというと戦争が起きた際、前線では日本と敵国が激しく交戦しますが、レンジャー部隊はその敵国の警戒外からヘリなどを使う空路潜入、船やボートで潜入する水路潜入、山など目立たないところから近づく山地潜入を駆使して敵国に近づき、付与された任務をこなします。
主な任務は、敵国が持久戦になると不利になるように補給物資(弾薬・食料)などを保管している地域を襲撃してその機能を奪う任務や、敵国の通信基地を襲撃し敵の通信手段を奪ったり、と任務自体はレンジャーで敵国を倒すのではなく、勝利に近づくためのサポートというのが主な任務になります。
地獄の訓練に挑むまで
素養試験
レンジャー訓練に参加したいという隊員はそれほど多くはありません。
ですが参加したいと言えば誰でも参加できるのではなく、訓練に参加できる体力・健康状態の試験があります。


・腕立て伏せ
・腹筋
・かがみ跳躍
・懸垂
・土嚢運搬
・100mダッシュ
・2kmハイポート
・水泳50m
・立ち泳ぎ1分
水泳2種目以外は全て戦闘服・半長靴で行います。
またハイポートというのは小銃を持って2kmを9分以内で走らなければいけませんが、水泳以外の科目はレンジャーを目指すなら当たり前にクリアできなければいけません。
水泳以外が当たり前と言った理由は僕が立ち泳ぎで大苦戦したからです 笑
普通に泳げるんですが立ち泳ぎだけは大の苦手で、メチャクチャ練習しました。
試験本番では深い水泳場を取れず、普通の水深のプール場だったので足がついたりしましたが、そのお陰でごまかしてクリアしました 笑
ちなみにこのコスいところは訓練中も発揮します。
漢なら返事はレンジャー!
このレンジャー訓練には「ハイ」や「いいえ」、「できる」、「できない」などそんな言葉はありません。
返事は全て「レンジャー!」のみです。
ちょっと無理そうなことや、しんどい時は「レンジャー!」のイントネーションが下がり気味になったりして感情を表現します 笑
バディとは一心同体
訓練間は24時間休養日の日もずっとバディと3m以上離れてはいけません。
トイレや風呂、食事中もずっと距離を保ちます。
夜中にトイレに行く時も申し訳ないと思いながら起こしますが、たまに1人でいくとレンジャー助教の当直に見つかって指導を受けます。
地獄の訓練
レンジャー訓練は約3ヶ月に及ぶのですが、だいたい半分くらいで前半・後半のように分かれています。
具体的に前半は基礎訓練で、実際に任務で使う地図の判読やロープ技術、山で遭難などした時の自活方法(ヘビ・ニワトリ・カエルの処理)、体力訓練です。
後半は行動訓練で、0〜9個の任務があり徐々に訓練の強度が上がっていきます。
基礎訓練
朝の点呼・食事・時間管理
基本的に自衛隊の朝は6時のラッパで点呼が始まります。
しかしレンジャー隊舎は離れていてラッパがほとんど聞こえないので教官の笛で起床し、3分以内に戦闘服・半長靴を完璧に着て整列・教官に報告までを完了しなければいけません。
ちなみにこの3分は部隊によって違って、僕のところは点呼場所が遠かったので3分でしたが近ければ2分以内のところもあります。
大体みんな5分前くらいには目覚めて笛が鳴った時早く動ける位置にスタンバイし、鳴った瞬間超速で着替えます。
僕達がいた基地の近くには学校があり、そこのチャイムが起床する5秒前くらいに鳴るのでその音が「よーい」で笛が「どん!」の合図になっていました 笑
また、当然3分で間に合わない日もあるのでその場合は間に合うまで何度もやり直しです。
もう一度服・靴を脱いで布団に入り、またラッパの合図で3分以内に点呼を間に合わせます。

二度寝、三度寝はザラです。
まあもちろん眠れるわけではありませんが 笑
この時間の大切さは起床以外でも当然口酸っぱく言われ、任務の際に時間に遅れればそれが任務失敗に繋がるので、時間に間に合わないことは強烈な指導をいただくことになります。
例えば3分遅れたとするなら秒換算して180秒になるのでその秒数分、腕立てやかがみ跳躍などをすることになります
そして点呼が終われば朝食です。
この点呼を一発で終わらせることにより、後々の自分達の限られた時間を最大限使えることになるのでできる限り一発で終わらせたいのですが、何十人もいればミスは起きます 笑
朝食に限らず、食事も時間制で教官に指定されたり自分たちで決めますが基本的に5分以内です。
味わってはいられませんし、行動訓練のために体力をつけるためご飯はてんこ盛り入れなければ助教に入れ直しを命じられ、さらに多くのご飯を食べるハメになります 笑
夏場なんかは炎天下の中、屋外で地獄の訓練をしてて食べる気も起きないのでご飯を食べるのが苦手な隊員は泣きながら口に詰め込んでいました。
飲める水分も限られますので流し込むのも考えて流し込まなければいけません。
ここでももちろん時間に間に合わなければ食堂の外で楽しい指導があります。
また部隊によって教官や助教のやり方が違い、僕の部隊では関西人らしいノリもあり、朝起きるとバディがいなくて焦ってとりあえず着替えて外に出るとパンイチで隊舎の前の大きな木に逆さまで縛り付けられていたりなどもありました。
内務点検
陸上自衛隊には「統制」という言葉があり、全員がロッカーの同じ位置に同じものを置いておく事により、その隊員がいなくても代わりの者がすぐに見つけられるように、と新隊員のときも徹底的に叩き込まれます。

ですがレンジャーはもちろんそんなの比ではありません。
訓練が始まって次の日に内務点検というものがあり、全ての統制をチェックされます。
物を置いている位置はもちろんのこと、その物の名前を書く場所、保管している服・下着の畳み方、個人ロッカーに掛けている服の順番・数などこれでもかというほどの統制があります。
そのチェックがダメであれば指導をいただき、みんなで腕立て伏せやかがみ跳躍などをこなしそれで体力をつけ、また数分の時間をもらって不備のあるところを修正し再点検、当然ダメでまた指導というループを半日続けます 笑
もうほんとに些細な、「え、それ?」みたいな理由でもクリアできないので、まずクリアできない内務点検が初っ端にあり「あ、俺来たらあかんところに来たな」と誰もが思います 笑
このレンジャー訓練は隊員に事故が起きないよう細心の注意を払ってスケジュールが計画されています。
ですのでこの内務点検も最初の計画で午前中内務点検となっていれば午前中は絶対に終わらないのです。
体力調整シリーズ
レンジャー訓練は段階ごとで強度を上げていく訓練が多いです。
その一つが体力調整です。
体力調整は簡単に言えば体力検定みたいなものですが、まあそんな可愛いもんじゃないです。
この体力調整は1−1、1−2、1−3、2−1、2−2、2−3、3−1、3−2、3ー3と9回あり、1シリーズは小銃無し、2・3シリーズは小銃有りになっていて1と2シリーズの内容は以下です
・腕立て伏せ
・腹筋
・かがみ跳躍
・懸垂
・ロープ登り
・ハイポート
1シリーズはこの内容を小銃なし、2シリーズは小銃有りになり、かがみ跳躍とハイポートの際に小銃を持ってこなしますがかなりキツイです。

かがみ跳躍はこの姿勢で足を交互に入れ替えてぴょんぴょんジャンプします。
ジャンプする高さと、この背筋をしっかりと伸ばした姿勢で跳ばないとカウントされません。
僕はこれにかなり苦しめられましたね 笑
毎日のように指導があってかがみ跳躍を指定された時はマジで萎えました。
小銃を持った訓練の時や荷物を持っているときはほんとに絶望的なキツさです。
体力調整は段階を追うごとに合格基準の回数が増えます。
2−3が一旦区切りで、受からない人は何度も日を改めて補備試験をすることになります。
この補備がかなりきついので早く受からないとどんどん疲弊していきます。
そうして合格すると3シリーズではハイポートです。
3−1は10kmくらいだったと思いますが、3−2は20km走歩と言って教官の笛の合図で猛ダッシュ、歩きを繰り返します。
楽やんと思うかもしれませんが結構脱落する隊員が多いのがこの20km走歩で、歩いてる時も当然黙って歩くわけではなく自衛隊の隊歌を何曲も覚えさせられるのでそれを大声でみんなで歌いながら歩きます。

3−1や3−3はずっと走りですが、こちらは走る歩調をみんな合わせられるように掛け声をずっと掛けながら走り続け、教官が笛を吹けばダッシュです。
ちなみに3−3は10マイル走と言って16km小銃を持って走ります。
これが基礎訓練の有終の美を飾る訓練です。

実際に僕たちが訓練していた際の写真です。
助教や教官から叱咤激励が飛び交い異様な雰囲気です。
地図判読
レンジャー隊員でなくても自衛官には必須のスキルが地図判読です。
山に入って部隊が迷わないように、先頭の隊員は速度を維持しながら安全な道を選定して進まなければいけません。
地図上で著名な目印(山の頂点や尾根)をつけてここまでの距離を導き、コンパスや自分の荷物を持った際の坂道での歩幅などを把握しているので、それをもとに地点地点で区切って迷わないように目的地に到着できるようにします。

こんなイキって説明してますが僕はめちゃくちゃ苦手でした 笑
必須なスキルですが完璧な人はそう多くはありません。
基礎訓練でここはかなり叩き込まれます。
ロープ訓練
レンジャーにロープは必須です。
自分の命を守るもので非常に大事で扱いに注意しなければいけません。
ロープは様々な場面で使われ、ヘリからのリペリングや山と山を渡る際、ものを固定する際などで用いられます。

どれだけ不器用でも目を瞑って真っ暗闇の中でもあらゆるロープの結索法ができるようになる程錬成します。
流石に辞めて4年も経てばほぼ忘れましたが 笑

これはモンキーという技術です。
苦手な人は全然できません。
なんせ最初は膝の裏が内出血しまくるので激痛です。
消防の人も使う技術ですね。
主に下から上に登っていく際に使います。

こちらはセーラーと言います。
モンキーより楽ですが下が見えるのでめっちゃ怖いです。
主に直線や下りで使います。
生存自活
この訓練では山で食料や水分がなくなった際の生き延び方を学びます。
具体的には泥水の濾過の仕方や、ヘビ・ニワトリ・カエルの捌き方などです。
ちなみにこの動物たちは訓練が始まった際にそれぞれに割り振られ世話をして名前をつけて可愛がります。
散歩などもしたりして愛着が湧いてきたときに〆て食します。

〆方は部隊よって違うようですが、僕のところでは胸を圧迫し窒息死させます。
僕はできなかったのでバディにお願いしました 笑
ヘビは確か牙を抜いて頭頭を落として皮を剥く要領だったと思います。
カエルは頭をしばいて気絶させてる間に捌きました。
全部湯掻いてマヨネーズで食べましたが、カエルは鶏肉みたいで美味しくて鶏肉であるはずの鶏とヘビはめちゃくちゃ固かったです 笑
鶏は聞いた話ではかなり年老いた鶏を2〜300円で買っているそうです 笑
そり固いですよね。
他にももっとありますが主な基礎訓練はこれくらいでしょうか。
次回はいよいよ行動訓練についてお話しさせていただきます!
では!